主犯の老人科学者を、それは中原が肩へと担ぎ上げ、
4人揃って地上へ出てみれば。
まだまだ夜半の暗がりの中、携帯で呼んだ警察車両がやって来ていて。
収容人員の多さにもめげず、周辺はたちまち移送車とパトカーで埋め尽くされる。
一応のリーダーだということで
太宰が話を通してあった対策担当の長へついさっきまでの顛末を手短に話し、
地下のフロアでのやり取りを収録したボイスレコーダを手渡して。
「お疲れでした。」
「そちらこそ。」
視線を外し合うと、あとは関わりなしとの約定。
部外者は出て出てという顔をされたのへ頬笑んでから、
皆が待つ、アスファルトも割れた旧いそれだろう搬入口まで向かえば、
錆びかけのガードレールに凭れた彼らは揃って空を見上げていて。
太宰もその視線を追うようにして天空を見上げれば、
頭上に浮かぶは真珠色の月。
秋のそれのように輪郭が冴えているとまでは言えない、どこか霞んだ甘い顔。
それでも声なく見惚れるには十分な透徹の美をたたえており、
「ややこしいもん飛ばして何してんだってところだよな。」
通信に天候予報にと必要があっての衛星なんだろうけれど。
無くても何とかやってたんだろうにな、
挙句の果てがこんなくだらない騒ぎまで引き起こして、
ばっかじゃねと呟きながら先に立ち去る中也の足取りには迷いがなく。
その手に握った小さな手の持ち主へ、何かしら話しかけていたが、
その中で少年の綺麗な髪の先をそっと摘まんで眉を寄せたのは、
さっきの諍いの中で削がれたの、しっかと見ていてのいたわりか。
「私たちも帰ろうか。」
そうと言って太宰が振り返れば、
その横顔の輪郭もすっきりと、同じように月を見上げていた黒外套の青年が、
素直に視線をこちらへ寄越す。
「? 太宰さん?」
「…、ああ、うん。」
認めるのは癪だが、小賢しいことして馬鹿じゃないかと思うのは中也と同じ。
観たそのまま綺麗なもの、心打たれるものがこんなにあるのに、
人ってのは全く何をやってるんだか。
車は向こうに留めたの? ああでも、少し歩こうか。
卯の花が咲いてた?
そうかじゃあ観に行こうよ、どんな花か教えてほしいな。
うん、私あんまり花の名には詳しくないんだ。
こんな時間帯はまだちょっと肌寒い潮風。
晒された頬の冷たさへ指を這わせ、含羞む様子を愛でつつ歩き出す。
〜Fine〜 17.05.19.〜05.21.
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*これもニコ動の“めかくしこぉど”新旧双黒版のを毎日観てて
んきゃ〜っ・カッコいいよぉvvと萌えた結果の代物です。
何て感化されやすいのだろうか…。
大元の事件に何だか妙な風呂敷広げてますが、大袈裟にしすぎたかなとちょっと反省。
そんなせいか終章は、大山鳴動して…もいいとこでしたね。
あっさり伸したにもほどがある。
依頼した筋の人に、せいぜいどんなもんだいと言ってやりましょう。(えっへん)
別に大々的な強盗企む窃盗団の事前逮捕とかでもよかったんですが、
日頃 角突きあってる組織同士が共闘するとなると
このくらいのことじゃないといかんかなぁと思っちゃいましてね。
公にはされないなら別にここまでの大義じゃなくてもいいんじゃんと、
あとで気がついたおばさんです。頭が固いなぁ、とほほん。
*実は落ちかけた太宰さんへ芥川くんが
「人虎と中也さんとどっちに担がれたいですかっ」と
本人はそれは真剣に呼びかけるというネタを考えていて、
(落下地点まで下ろしてやるつもりで。間接的になら黒獣も使えそうなので)
それが使えなかったのが残念です。(笑)
天然の汚名が重ならなくてよかったね。あ、羅生門は要らないからね。

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